多くの放送局がAM放送を終了し、FM放送への転換を進めています。
なぜAM放送が終了するのか、FM転換によってどのような変化が生じるのか、そしてリスナーの皆さんが今知っておくべき情報について解説します。
長年ラジオを愛聴してきた方も、最近ラジオを聴き始めた方も、以下の対処法などチェックしてくださいね。
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AMラジオ終了の背景と理由
AMラジオの終了には、いくつか理由があります。最も大きな要因は、放送事業者の経営状況の悪化です。AM放送の維持には膨大な費用がかかり、特に老朽化した設備の更新には20億円以上の費用が必要とされています。
また、AM送信所の多くは建設から数十年が経過し、設備の老朽化が深刻な問題となっています。これらの設備を維持・更新するには、技術的な専門知識と高額な投資が必要ですが、広告収入の減少や聴取者数の減少により、多くの放送局がこの負担に耐えられなくなっています。
さらに、メディア環境の変化も影響しています。インターネットやスマートフォンの普及により、若い世代を中心にラジオ離れが進んでいます。このような状況下で、AM放送を継続することの経済的合理性が問われているのです。
ワイドFM転換のスケジュールと現状
FM転換は段階的に進められています。
2028年秋までに、民放AMラジオ47局のうち44局がFM化を目指すという大規模な計画が進行中です。
AMラジオの終了時期について
AMラジオ終了の最終目標期限
AMラジオは2028年秋に原則終了する方向で進んでおり、民放AMラジオ47局のうち44局が2028年秋までにFM局となることを目指します。
段階的なスケジュール
第1段階:実証実験(2024年2月〜2025年1月)
AMラジオを展開する13社の放送事業者は、2月1日より順次、AMラジオ34局の運用を一定期間休止し、予定期間は最長で2025年1月31日までとなっています。
現在進行中の実証実験:
- 2024年2月1日から開始
- 13社34局が対象
- AM停波による社会的影響を検証
第2段階:特例措置(2025年9月〜2026年10月)
2回目の特例措置(適用期間:2025年9月1日〜2026年10月31日)の申請を受け付けており、特例措置の適用を受けたAMラジオ放送事業者において休止が行われる予定です。
最終段階:完全移行(2028年秋)
2028年秋にAMラジオ放送が原則終了する方向で進められています。
全てのAM局が終了するわけではない
- 民放AMラジオ47局のうち44局がFM化を目指す
- 残り3局は継続する可能性
- NHKのAMラジオは対象外
段階的な検証プロセス
実証実験で社会的影響を検証しながら進めているため、スケジュールに変更が生じる可能性もあります。
具体的なタイムライン
- 2024年2月〜2025年1月: 第1回実証実験
- 2025年9月〜2026年10月: 第2回特例措置
- 2028年秋: 最終的なAM放送終了予定
つまり、AMラジオの完全終了は2028年秋が目標ですが、現在も段階的に一部の局で運用休止が行われており、地域や放送局によって終了時期が異なります。
AMラジオ局→ワイドFM周波数 早見表
ワイドFM開局情報一覧
No. | 都道府県・広域 | 開局年月日(西暦) | 周波数(MNz) | 放送局 |
---|---|---|---|---|
1 | 【富山県】 | 2014年11月26日 | 90.2 | 北日本放送 |
2 | 【愛媛県】 | 2014年11月26日 | 91.7 | 南海放送 |
3 | 【鹿児島県】 | 2014年12月22日 | 92.8 | 南日本放送 |
4 | 【秋田県】 | 2015年2月26日 | 90.1 | 秋田放送 |
5 | 【山口県】 | 2015年7月8日 | 92.3 | 山口放送 |
6 | 【茨城県】 | 2015年8月13日 | 94.6 | LuckyFM茨城放送 |
7 | 【中京広域】 | 2015年9月25日 | 93.7 | CBCラジオ |
8 | 【中京広域】 | 2015年9月25日 | 92.9 | 東海ラジオ放送 |
9 | 【佐賀長崎】 | 2015年9月25日 | 92.6 | 長崎放送 |
10 | 【新潟県】 | 2015年10月20日 | 92.7 | 新潟放送 |
11 | 【広島県】 | 2015年11月25日 | 94.6 | 中国放送 |
12 | 【関東広域】 | 2015年12月7日 | 91.6 | 文化放送 |
13 | 【関東広域】 | 2015年12月7日 | 90.5 | TBSラジオ |
14 | 【関東広域】 | 2015年12月7日 | 93.0 | ニッポン放送 |
15 | 【近畿広域】 | 2016年2月29日 | 93.3 | 朝日放送 |
16 | 【近畿広域】 | 2016年2月29日 | 90.6 | MBSラジオ |
17 | 【近畿広域】 | 2016年2月29日 | 91.9 | 大阪放送 |
18 | 【福岡県】 | 2016年3月18日 | 91.0 | RKB毎日放送 |
19 | 【福岡県】 | 2016年3月18日 | 90.2 | 九州朝日放送 |
20 | 【宮崎県】 | 2016年3月22日 | 90.4 | 宮崎放送 |
21 | 【熊本県】 | 2016年4月20日 | 91.4 | 熊本放送 |
22 | 【和歌山県】 | 2016年5月16日 | 94.2 | 和歌山放送 |
23 | 【大分県】 | 2016年6月16日 | 93.3 | 大分放送 |
24 | 【石川県】 | 2016年7月27日 | 94.0 | 北陸放送 |
25 | 【北海道】 | 2016年10月19日 | 91.5 | 北海道放送 |
26 | 【北海道】 | 2016年10月19日 | 90.4 | STVラジオ |
27 | 【静岡県】 | 2016年11月30日 | 93.9 | 静岡放送 |
28 | 【岩手県】 | 2016年12月22日 | 90.6 | IBC岩手放送 |
29 | 【鳥取島根】 | 2017年3月1日 | 92.2 | 山陰放送 |
30 | 【福島県】 | 2017年3月2日 | 90.8 | ラジオ福島 |
31 | 【福井県】 | 2017年3月28日 | 94.6 | 福井放送 |
32 | 【宮城県】 | 2017年4月20日 | 93.5 | 東北放送 |
33 | 【青森県】 | 2017年9月28日 | 91.7 | 青森放送 |
34 | 【沖縄県】 | 2017年12月15日 | 92.1 | 琉球放送 |
35 | 【沖縄県】 | 2017年12月15日 | 93.1 | ラジオ沖縄 |
36 | 【山梨県】 | 2017年12月21日 | 90.9 | 山梨放送 |
37 | 【栃木県】 | 2017年12月26日 | 94.1 | 栃木放送 |
38 | 【岐阜県】 | 2018年3月7日 | 90.4 | 岐阜放送 |
39 | 【岡山県】 | 2018年3月12日 | 91.4 | 山陽放送 |
40 | 【滋賀京都】 | 2018年3月16日 | 94.9 | 京都放送 |
41 | 【長野県】 | 2018年3月19日 | 92.2 | 信越放送 |
42 | 【徳島県】 | 2018年9月18日 | 93.0 | 四国放送 |
43 | 【山形県】 | 2018年9月28日 | 92.4 | 山形放送 |
44 | 【兵庫県】 | 2019年3月18日 | 91.1 | ラジオ関西 |
45 | 【高知県】 | 2020年2月4日 | 90.8 | 高知放送 |
46 | 【香川県】 | 2020年2月14日 | 90.3 | 西日本放送 |
47 | 【神奈川県】 | 2020年3月16日 | 92.4 | アール・エフ・ラジオ日本 |
総務省 ワイドFM局一覧

ワイドFMとは何か
ワイドFMは、AM放送が入りにくい場所でも聴けるよう、新たに周波数を割り当てられた補完放送のことです。従来のFM放送が76MHz~90MHzの周波数帯を使用していたのに対し、ワイドFMは90MHz以上の周波数帯を使用します。
ワイドFM対応ラジオは76-108MHzを受信可能
ワイドFMは90-108MHz周波数帯を使用します。
ワイドFMの最大の特徴は、音質の向上です。
FM電波はAM電波と比べてノイズが入りにくく、よりクリアな音質で番組を楽しむことができます。また、雑音や混信の影響を受けにくいため、より安定した受信が可能になります。
ただし、ワイドFMは既存のFM放送とは異なる周波数帯を使用するため、対応していない古いラジオでは受信できません。この点が、リスナーにとって最も重要な変化の一つとなります。
リスナーへの影響
聴取環境の変化
ワイドFM転換により、リスナーの聴取環境は大きく変化します。
最も重要なのは、受信機の対応状況です。現在販売されている殆どの受信機やカーラジオはワイドFMに対応していますが、古いラジオでは新しいFM周波数を受信できない場合があります。
対応していない場合は、新しい受信機への買い替えが必要になります。
電波の特性による変化
AM波とFM波では、電波の特性が大きく異なります。
AM波は遠方まで届きやすく、夜間には他県の放送局まで受信できることがありました。
しかし、FM波は比較的近距離での受信に適しており、山間部や遠方での受信状況が変わる可能性があります。
また、災害時の強さについても懸念が示されています。
AM波は災害時にも比較的安定した受信が可能でしたが、FM波の場合、地形や建物の影響を受けやすいという特性があります。
番組内容や放送局への影響
幸い、番組内容については基本的に継続されます。
AM放送からFM放送への転換は、あくまで電波の種類の変更であり、番組の内容や放送時間に大きな変化はありません。
ただし、注意すべき点として、NHKのAMラジオ放送は今回の転換の対象外となっています。
これは、NHKが公共放送として災害時の情報伝達などの重要な役割を担っているためです。
また、地域によって対応が異なる状況も生じています。
一部の放送局では、当面の間AMとFMの併用を続ける予定であり、完全なFM転換までには時間がかかる場合もあります。
今後の展望と課題
ラジオのFM化により音質の向上や維持費の削減による放送局の経営安定化が期待されています。
しかし、同時に新たな課題も生じています。
インターネットラジオの普及により、従来の電波による放送とは異なる聴取方法が広がっています。多くの放送局がアプリやウェブサイトでの配信も行っており、これらの代替手段との関係も重要な要素となっています。
また、古いAMラジオが手元に無いと災害情報の受信で困難なシーンもありそうです。災害時の情報伝達手段としての役割についても、FM転換後の有効性を検証する必要があります。
一定数の放送局がFMとAMの併用を続ける予定であることも、この懸念に対する配慮の表れと言えるでしょう。
日本のラジオ局が聴けるアプリ
無料で使えるラジオアプリを、パソコン・スマホで利用できるものを中心にご紹介します。
radiko(ラジコ)
全国の民放全99局とNHKのラジオとポッドキャストを聴けるアプリです。スマートフォンやアプリ・パソコン・スマートスピーカーでラジオやポッドキャストが聴ける無料のサービスです。
ABCラジオ

MBSラジオ

OBCラジオ大阪

主な機能:
- ライブ機能:あなたの今いるエリアで現在放送しているラジオ局の番組を聴くことができます
- タイムフリー機能:過去7日以内に放送された番組を、再生し始めてから24時間以内であれば、合計3時間まで、いつでも聴くことができます
対応デバイス: iPhone、Android、パソコン(ブラウザ版)
NHKラジオ らじる★らじる
インターネットでNHKのラジオ放送をお聴きいただける「NHKラジオ らじるらじる」アプリ。NHKラジオ第1・2、NHK-FMの3つのチャンネルを配信しています。
NHKらじる
主な機能:
- 幅広いジャンルのなかでも、語学系の番組が充実
- リアルタイムで聴きたい放送は「番組表」から探して、視聴予約をすると開始時間5分前に通知が届きます
- 過去の放送の再視聴も可能(期限あり)
対応デバイス: iPhone、Android、パソコン(ブラウザ版)
現行のワイドFMチューナー搭載ラジオ
ワイドFM対応のラジオチューナー搭載機器があれば、旧AMのワイドFM放送を受信できます。
この機会に端末もチェックしてくださいね。

カーオーディオ 車のラジオどうすればいい?
車のラジオについて、AMラジオ終了への対応方法を説明します。
まず確認すべきこと
お使いのカーラジオがワイドFMに対応しているか確認する
確認方法:
- 周波数範囲をチェック
- ワイドFMは90.1MHz〜95MHzの周波数を使用します
- カーラジオのFMダイヤルで94MHz以上まで受信できるかチェック
- 従来のFM放送は76MHz〜90MHzなので、90MHz以上が表示されるかが重要
- メーカーサイトで確認
- トヨタなど各メーカーのサイトでワイドFM対応状況を確認できます
- パイオニアなどオーディオメーカーも対応機種リストを公開しています
対応が必要なパターン
古いカーラジオの場合
- 2014年以前の車両に搭載されているカーラジオは、ワイドFMに対応していない可能性が高い
- FMの最高周波数が90MHzまでしか表示されない場合は非対応
新しいカーラジオの場合
- 2015年以降に製造された多くのカーラジオはワイドFMに対応
- ただし、全てではないため確認が必要
対応方法
カーラジオの交換
メリット:
- 根本的な解決策
- 音質も向上する可能性
デメリット:
- 費用がかかる(数万円〜)
- 取り付け工事が必要
FMトランスミッターの活用
仕組み:
- スマートフォンでラジオアプリを再生
- FMトランスミッターで車のFM周波数に送信
- 既存のカーラジオで受信
メリット:
- 比較的安価(数千円程度)
- 簡単に設置可能
- スマートフォンなどの楽曲がFMラジオを通して楽しめる
3. スマートフォンの直接利用
方法:
- radikoやNHKらじる★らじるアプリを使用
- 車のAUX入力やBluetooth接続でスピーカーから再生
注意点:
- 通信データ量がかかる
- 運転中の操作は危険
FMラジオ周波数変換器を使う
ラジオ周波数変換器
ラジオ周波数の変換器を使うことで受信バンドを広げることが可能です。
※電源取得と接続に一定の知識が必要です。
このようなブースターを使うことでFM受信を強化することが可能です。
車載デッキのアンテナ配線にかませることで受信ををブーストすることも出来ます。
12V電源をACC電源から引き込みアンテナ線に噛ませる必要があります。
ワイドFM対応 カーオーディオヘッドユニット
この際、ヘッドユニットを交換するのも一つの選択肢です。
リスナーが今すべきことは?
受信機の対応状況確認方法
まず、お使いのラジオがワイドFMに対応しているかどうかを確認しましょう。受信機の説明書を確認するか、90MHz以上の周波数が表示されるかどうかで判断できます。カーラジオの場合も同様に、FM受信可能な最高周波数を確認してください。
各放送局の情報収集方法
お聴きの放送局がいつFM転換を行うか、新しい周波数は何MHzになるかなどの情報を収集しましょう。各放送局のウェブサイトや番組内での案内で、最新の情報を入手することができます。
代替手段(アプリ、インターネット配信)の活用
万が一、新しい受信機の購入が困難な場合や、FM電波の受信状況が良くない場合は、スマートフォンアプリやインターネット配信を活用することも考えましょう。多くの放送局が「radiko」などのアプリでの配信を行っています。
地域の放送局への問い合わせ先
不明な点がある場合は、直接放送局に問い合わせることも重要です。各放送局では、FM転換に関する専用の相談窓口を設けているところもあります。
まとめ
AMラジオは長年にわたり、私たちの生活に欠かせない情報源として親しまれてきました。その歴史的意義は非常に大きく、多くの人々の記憶に深く刻まれています。
今回のFM転換は、経営効率化と音質向上を目的とした必要な変化です。しかし、同時に災害時の情報伝達能力や広域受信といった従来の特性が変わることも事実です。
重要なのは、この変化を理解し、適切に対応することです。受信機の確認、放送局の情報収集、代替手段の準備など、リスナーができることから始めましょう。
ラジオ文化は決して終わるものではありません。技術の進歩とともに新しい形で発展していくことが期待されます。FM転換を機に、より多くの人々がラジオの魅力を再発見し、この貴重なメディアが次世代にも継承されることを願っています。